| ■SMの悦び。 |
前回、タカと別れたのは去年の9月 ショーが終わって後片付けが済んですぐの、劇場の前。 いつもあっさり別れるタカに寂しい気持ちにもなる。
でも、「もう少し余韻を・・・」という言葉を飲み込むことで、 思い出を美しく完結させることが出来るのだと知った。
いつもショーの後 思い切りつけた傷を眺め、頭を撫で 目線を交わす。 それだけで、大した言葉も無い。
そして、静かに離れていく。
これは、タカの為にもなるんだと思う。 だからタカも言葉を飲み込むんだ。 そう感じる。 本当に私のことを思ってくれている配慮が、静かに心に響いてくる。
奴隷は、自分の体の一部にしたい。 其の気持ちが強くて、いつも近付きすぎる。 行き過ぎた優しさや愛情は、甘えに変える隙を作ってしまう。 そして、良い関係すら壊してしまう。
それが私のいけない所。
お互いの思いをハッキリ方向付けなくても、お互いの中で完結させる事で 後天的に築かれていく関係もあるんだ。
一つになれないことは寂しい。 でも、ずっと大切にするためには 一つになれる「瞬間」だけで、留めて置く事も必要なんだと思うよう になった。
SMは、人間だけに出来る遊び。
人間に出来ること・・・。 それは、本能を理性でコントロールすること。
例えば、恋焦がれた相手に対して 恋人になりたいと願う。体の関係を結びたいと願う。
だけど、一旦憧れの存在と交わってしてしまえば 憧れという非現実の夢は現実の存在に堕ち、叶わないことに対する 渇望は少しずつ薄れていく。
自分の欲望を燃え上がらせ続ける為に、 あえて触れない。
そのもどかしさが快楽でもある。 その究極がSとMの関係でもあるような気がする。
いつまでも、相手を自分の美の対象 自分のファンタジーの対象として思い続ける為に わざと、一歩後ろに足を出す。
今まで何度も味わった奴隷との苦しみと、タカとの関係で 私はそんなアンビバレンスを知った。
二人きりでプレイをしない。 これが、凄まじい悦びを生むことも知るようになった。
ステージの上で、半年振りに鞭を受ける恐怖で怯える姿。 緊張の余り意識を失いそうになる姿。 それでも、必死に心を見せようとする姿。 一つ一つに向き合うとき 他のものに例えようの無い程の喜びを感じる。 「プレイできる!」 無心で責める楽しさに没頭する。 責めは何でもいい。 バラ鞭でもいいし、蝋燭でもいい。 ううん、道具なんて要らない。 床に押し倒し、首根っこを手で押さえつけるだけでもいい。
じっくり責める素晴らしさ、 その後ろには寂しさや切なさが隠れているから 責める、繋がる「瞬間」が、ひときわ輝いて感じられる。
この世のどんな遊びより、楽しい! 生の心に触れるたった少しだけの「瞬間」 これに代わるエクスタシーはない。
タカの体から、鞭で責められる感覚も消える程 前回のプレイから時間が空いた。 奴隷にも社会生活がある。 会えないことは仕方がない。
少しずつ少しずつ、タカの体と心の様子を見ながら 心に近付いていった。
男性に対してするのは珍しい「駿河問い」で固定し 苦しむ様子を眺めた。(本当の駿河問いはよりは少しだけ→ 10cmぐらい?手足の距離が開いているけど) タカにやるのは初めて。 前回タカは「狸(ケモノ)吊り」で凄まじく苦しんで叫んだ。 その叫びを受けて狸のまま鞭を巻いた。 でも、狸はほとんど持たなかった。 「手首が千切れる!」そんな叫びが聞こえたようだった。 でも 今回は狸よりもっと辛い「駿河問い」。 タカが我慢できるかどうかはわからない。 でも、きっと心は真っ直ぐ居てくれる。 私を見ていてくれる気持ちを見たい。 そんな気持ちがあったから、どうしても一番辛い責め縄で責めてみたかっ た。
支配する悦びを感じる。
体の奥から悦びが、むずむずと湧き上がり 何もかも忘れた。
四肢に巻き付くSnake Whipは、蛇のようにタカの体を捕らえ タカの搾り出すような絶叫を叩き出した。
軋む体。 どんどん内臓にかかるダメージ。 縄だけでもタカを責め続けているのに タカの自由を全て奪って、自分のものにしてしまいたいという 気持ちの現われなのか 手も足も全部に鞭をクルクルと巻きつけ、破裂音を鳴らした。
「ああ凄い!」 凄まじい快感だった。 もっともっと繋がりたくて打った・・・。
今回のショーでは「一本鞭が見れるショー」という見方をされたくなくて あえて長い鞭は使わなかった。 2日目の最後のステージでも、使わないまま終わろうとしてた。 充分プレイを楽しめたから。
駿河問いを解くとき、電車の時間を気にしてか 誰かが席を立ったのが見えた。 1回目のショーを観てくれた人なんだなと感じた。
その時、何故かすっと気持ちが動いた。
「これで最後なんだ!」 そう気付いて、見世物にする為じゃなく 私達のために鞭を打とうと思った。
四肢が酷く痛んで、ふらつくタカを立たせ 花道に連れて行った。
朦朧として盆に戻ろうとするタカを怒鳴りつけた。
「そこじゃない!立て!」
ゆっくりと本舞台に並ぶ鞭の中から 3mの鞭を取る。 タカの目を見た。 不思議と、タカは怖がりながらも目で頷いていた。 「頑張らせてください」 そんな声が聞こえるようだった。
指先で、鞭に巻きつけたラットティルを解き 舞台を片付け 鞭を振り上げる。
フラフラになっている足でグッと踏ん張るタカ。
ラフマニノフのピアノ協奏曲が、心に響く。 こんな幸せなSMをしたことがない。そう思った。
お仕置きの鞭は哀し過ぎる。 お金のためのプレイは虚しい。 馴れ合いのプレイは傷を広げる。
繋がる為に、真っ直ぐ向き合うSM・・・。
久しぶりの長い鞭は、私も怖かった。 お客さんに怪我させたくない。 タカにも、プレイを越えた怪我は絶対にさせたくない・・・。
全てを確かめながら、少しずつ少しずつ 強さを上げて打っていく。
鞭の音。 舞台の光。
タカの涙・・・・・・。
溜まってた感情が、一杯吐き出せた後 タカを足元に呼んだ。
必死に最後まで立っていようとしたタカ、一生懸命私の目を見て 鞭を受け止めたタカ。
抱きしめたかったけど、我慢した。 私は女王。 タカの主人。 高い位置から、少し腰を折って頭を抱いてやるだけにした・・・。
この関係を大事にしたいから 床に座って正面から抱き合うことを グッと堪えた。
頭を撫でてから、タカを足元に平伏させる。 体の奥までが震えるような喜びだった・・・・・。
今回の自分の目標は、じっくり大切にプレイすること。 それは、私にまた新しい世界を見せてくれた。
経験を重ねるごと、年を取るごと 見えるようになることがある。 改めて子供になって、SMが好きになった。
追い求めれば追い求めるほど 大人になり、物事を受け止められるようになり そして・・・・・無垢な子供に返っていく。
こんな幸せなことは無いと思う。 もっともっと子供になりたい。 もっともっと純粋に喜びたい。
ショーという機会、応援、奴隷の心 全てが本当に有難いと思う。
こんな喜びをもらえたことに、心から感謝したい。
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